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2019-04

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「グッドナイト&グッドラック」 (2005年/米)

今回はハリウッドに映画の本質を思い出させてくれたかのような、現代政治史におけるアメリカの汚点をリアルに描ききった良作を紹介したい。この映画は当時大統領であったアイゼンハワーすらもその名を恐れたと云う悪名高いマッカーシー上院議員に真っ向から立ち向かっていき、彼の恐怖政治に支配されたアメリカに一筋の巧妙をもたらしたCBSキャスターのエド・マローを、緊迫感漲るマッカーシーとの対決を軸に描いたものだ。

まずこの役でアカデミー主演男優賞にノミネートされたデヴィッド・ストラザーンの演技が目を引く。キャスターにもかかわらずマイク恐怖症で、マイクの前に座ると冷や汗をかいて神経質に身を硬くするが、鋭い眼光は失わないエド・マローを忠実に模写している。片時も煙草を手放さず、放送終了時にチビた煙草を指の先に挟んで「Good night & Good luck」と締め括る姿は痺れるほど格好良い。

そもそもマッカーシズムとは、アメリカがアメリカたる、そのアイデンティティーに端を発し、「アメリカ的価値観」が空前の(しかし不健全な)栄光をもたらしたことによりアメリカの人々の夢が現実となった。そのまま「アメリカ的価値観」は世界に浸透していくものと誰もが考えた矢先に、異分子としての共産主義国という巨大な敵が立ちはだかり、冷戦へと突入すると瞬く間に甘美な夢も悪夢に変わり、そこから生まれる深い恐怖心はアメリカ国内の異分子へと矛先を向けていったと云うプロセスを踏んだものである。

このようにマッカーシズムの本質は語られるところなのだが、この映画は社会の狂乱による相互増幅性とでも呼べる現象をむしろ描くことをせず、メディアにおける緊張的対決を徹底的に描き込むことで焦点がぼやけてしまう難から逃れている。
特に緊迫した状況というものを非常に上手く演出している。当時のマッカーシー上院議員の実際の映像をふんだんに使い、それは云うまでもなく他の如何なる手段よりも克明に彼の狂気を浮き彫りにする。そしてこの映像と齟齬を生じさせないように映画全体をモノクロにしたのも正解だろう。これはまた映画に「マッカーシズムは二度と繰り返してはならない」と云う、メディアないしは民主主義社会に対するメッセージを発する上で、マッカーシズムの過去性を強調することに成功しているし、一方でマッカーシズム横行前の、『第三の男』のような古き良きアメリカ映画の品格がこの映画に付与されているかのような印象を受ける。

実際のエド・マローがメディアにおける中立の姿勢を崩すまいとの努力を費やしたのに対して、この映画はメッセージを強調したい製作者の感情が映像構成に表れてしまったと云う難点が見受けられるものの、其れを差し引いても十分秀作と云える映画である。監督ジョージ・クルーニーのリベラリズムの真髄だ。
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● COMMENT ●

これが例のお爺ちゃんのレポートのやつですか。おもしろそうですね。是非私も見てみたいです。

自由主義者は「自由」から自由ではない。田中修

へー。

そうです。これが件の題材です。
これは田中修さんもとても気に入ると思いますよ。確か大学図書館にも入荷していたから、お暇なときに閲覧してみて下さい。

自由主義を豪語するのもまた眉唾モノですね(笑)


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晋撰堂

Author:晋撰堂
晋撰堂は京極夏彦の京極堂シリーズにかぶれていた頃に命名。
自分の名前にも由来していますが、文化的娯楽作品から気が向いたものを取り上げてレビューを書いていこうと思います。たまに雑記と称して日々の雑念も放出します。
ただ問題は、ほとんど更新をしないということ。休眠状態を常としている現状ですが、もっと気軽に書けるよう努力してみようかと思ったのも、本日の気の迷いかもしれないです……

コメント、リンク等も何卒御気軽に。

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