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2019-04

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パーマネント・バケーション (1980年/米)

ニューヨークの裏町にある寂れたアパートで暮らす16才の青年は、眠れない晩をいつものようにあてどなく歩き回って過ごした。
部屋に戻ってきた彼は、同居生活を送りながらも、どこかお互いに心がすれ違っているガールフレンドに対し、自らの孤独感に根ざした漂流の必要性を訥々と訴える。
その後再び精神病院に入院中の母親を見舞ったり、町をぶらついて部屋に戻ってみると、彼女の姿は消えていた。
仕方なく彼女に置き手紙を残し、必要なものだけを鞄に投げ入れ、波止場へと向かった......

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「ダウン・バイ・ロー」でいまやファンも多いジム・ジャームッシュ監督がニューヨーク大学の卒業制作として16ミリ・フィルムで作り上げた、記念すべき長編デビュー作。
空虚なビルの鉄筋を叩いているような、不気味な鐘の音が降り注ぐなか、どことなく暗い目をした青年が帰宅して始める独白から、私たち観客は緩やかにこの映画へ引き込まれていく。

―物語とは、点と点を結んでいき、最後になってようやく図形が見えるものだ。そして僕の人生もそんなものだろう。
そう、だから漠然とした不安に苛まれる。

―最初は目新しいものでも、次第に嫌悪の対象へと変わっていく。
しかしその無限にも思えるスパイラルから逃れようともがき続ける。

―嗚呼、鐘の音が止まない。

ここで描かれているのは、確かに理由なき孤独感と社会への拒絶感に満ちた「青春」である。
しかし多くの者が一種の憧れを抱くような「自分探しの旅」ではない。
青年の目から見る人々は、喜劇でもあり悲劇でもあるような、そしてそのどちらでもないような狂気に犯されている。
ベトナム戦争の悪夢を引きずる男、笑い続ける女、一つのジョークに執着する男、独り歌い続ける女......
それはもはや絶望の淵のような鬱々とした世界が広がっているようにしか見えない。
けれども、人々と接している間は鐘の音も聞こえない。
そこで青年は決意する――知らない世界を目にしようと。
その決意には、帰ってきた自分はきっと一回りも二周りも成長している、などと云う甘ったるい期待は毛頭ない。
もしかしたら、帰ってこられないかもしれない。
「この世界は自分に合わない」のではなく、「この世界は何ものをも認めていない」のかもしれないのだから――。
時間的にも、空間的にも束縛されることのない“永遠の休暇”で、彼は一体何を目にするのか、気になるところである。

何が起こるでもなく、ただ坦々と紡がれていく映像は、冷気を肌で感じる早朝に見る夢のようで、浸ることができなければ苦痛かもしれない。
しかしカラーにも関わらず、モノクロームのような雰囲気を漂わせる映像は、まさしくジム・ジャームッシュ映画である。
ラストシーンの、船がニューヨークの街から離れていき、次第に海が広がっていくところは、彼の今後を表しているようである。
がらんとしたアパートの一室で、音楽に合わせて独り踊る印象的な青年の姿がDVDのパッケージになっている本作は、ファンならば必見であろう。
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晋撰堂

Author:晋撰堂
晋撰堂は京極夏彦の京極堂シリーズにかぶれていた頃に命名。
自分の名前にも由来していますが、文化的娯楽作品から気が向いたものを取り上げてレビューを書いていこうと思います。たまに雑記と称して日々の雑念も放出します。
ただ問題は、ほとんど更新をしないということ。休眠状態を常としている現状ですが、もっと気軽に書けるよう努力してみようかと思ったのも、本日の気の迷いかもしれないです……

コメント、リンク等も何卒御気軽に。

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