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2019-01

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バベル

監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと脚本ギジェルモ・アリアガが組んだ2006年のアメリカ映画。
出演はブラット・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、アドリアナ・バラッザ、役所広司、菊池凛子

“バベルの塔”については旧約聖書の創世記第11章に記述されている。その中においては、全世界が1つの言語によって成り立っていた時代、メソポタミヤの人々は自分たちの名前を大いに揚げ、地の前面に散らされる事のないように自分たちの都市を、そして塔を建て、その頂を天まで届かせようとした。しかしそれを見ていた神が怒り、人々の言葉を混乱させた。そのため人々は互いの言語が理解できず、塔の建設は破綻し、各地へと散らばっていった、とされている。


映画では4つの地域に暮らす人々の混沌とした物語が紡がれていく。

子供たちの事ばかりを気に掛け、いつの間にか自分たちの幸福やコミュニケーションを置き去りにしてきてしまったアメリカ人夫婦。

他者と著しく隔絶されたモロッコの砂漠に共に住むが、互いに素直に理解し合えないベルベル人の兄弟。

自らの領分を逸したために大きな代償を支払わねばならなくなったメキシコ人不法就労者と、その時の感情任せで暴走してしまう若者。

そしてまるでバベルの塔が如き超高層ビルが立ち並ぶ日本。障害があるが故に受ける社会からの拒絶、偏見、差別。それら不条理に対する不満と自分自身に憤りを必死に訴えようとするが、逆に自分を痛めつけていってしまう聾唖の少女と、それをなんとか理解しようと努めるが喪失感からかいつもどこかですれ違ってしまう父親。

この登場人物たちが偶然の関わりを持ったとき、血は流され、死が訪れ、喜びは絶望に色褪せ、叫びは嗚咽に変わる。しかし同時に各人は日頃は気づかないが、確実に己と己の大切な人と結ばれている一本の尊い糸の存在を噛み締めるのだ。


この映画では必死で何かを訴えよう、伝えようともがきながら生きている人々の姿を克明に描き、その人々の心を浮かび上がらせている。私たちは鑑賞後に走る衝撃をそのまま受け流してしまってはならない。なぜならその衝撃は私自身の心に饒舌に問いかけているように思えてならないからだ。「これはお前たち自身の姿なんだよ」と。

私たちも多かれ少なかれ混沌とした関係性の中で日々息を切らせている。もしも一日の終わりにその日の出来事を思い出したとき、喜びや怒りや不安を感じつつ繰り返しである明日を待ち望む気持ちがあるならば、それは自分の世界をよりよくしようとしている健全な状態である証拠だ。しかし、もしその日の事実だけしか思い出せず、只々虚脱感に襲われるようならば、それは必要以上に傷つくことを恐れ、いつの間にか他者との間に高い垣根を作ってしまっているのだろう。他者と感情の共有がなければ新たな楽しみは生まれない。もちろん他者と積極的にコミュニケーションを取り、時として感情をぶつけ合わなければ感情の共有も成立しない。そしてひどく薄っぺらな自分に気づいたとき、不安と疲労感に苛まれる。常時この状態に陥っている私たちは、不安を隠し、仮令まがいものであっても楽しさを手にするため、私たちはカラオケやボーリング等、“他者との間に媒介を置きつつその時間内だけは楽しめる切符”を買ってしまっているのだ、とも思う。

この映画は人々の絶望的な状況をただ提示しているわけではなく、エンディングでは混沌とした人間関係の霧が僅かに晴れていく様子を見せ、私たちに希望を抱かせる。

確かに、人間としての様々な表情を見せる演技をしているのは菊池凛子だけで、他はただ危機的状況を取り繕っているだけのような印象を受ける。しかしこの映画を観れば、誰しもが何かを思うところがあるはずだ。
名作には至らないかもしれないが、とても力のある作品である。
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Author:晋撰堂
晋撰堂は京極夏彦の京極堂シリーズにかぶれていた頃に命名。
自分の名前にも由来していますが、文化的娯楽作品から気が向いたものを取り上げてレビューを書いていこうと思います。たまに雑記と称して日々の雑念も放出します。
ただ問題は、ほとんど更新をしないということ。休眠状態を常としている現状ですが、もっと気軽に書けるよう努力してみようかと思ったのも、本日の気の迷いかもしれないです……

コメント、リンク等も何卒御気軽に。

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