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2019-01

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ブラック・スネーク・モーン (2006年/米)

アメリカの田舎町メンフィス――そこは美しい自然に囲まれていながらも暴力と性がはびこる、どこか攻撃的な雰囲気を持つ町だ。
その町でかつてはブルース奏者として名を馳せたものの、今は農園を営み、また教会にも通う敬虔な市民として暮らしてきた初老の男ラザルスは、妻からの離婚宣言でひどく不愉快な日々を送っていた。そんなある日、ラザルスは若い女が道に倒れているのを見つけ、家に連れ帰った。女の名はレイ――幼少期に父親から受けた性的虐待から性行為依存症を患っていた。それに気づいたラザルスは、これぞ俺の使命だとばかりにレイの身体に頑丈な鎖を巻きつけて荒治療を始めるのだったが......!?

屈強な黒人男性が座り込んだ美少女に鎖を巻きつけ、正面を睨みつけているポスターがとてもセクシーで、思わず目を引き付けられるだろうが、内容は非常に真剣で切ない。過激なシーンがないと云えば嘘になるが、しっかりとした物語構成と誠実な演出、そして見事に危ういレイの病理を体現して見せたクリスティーナ・リッチの演技のおかげで必要以上に卑猥なものに陥っていない。むしろ病魔との闘いの象徴ともなった鎖だけでなく、魂から歌い上げるラザルスのブルースによって心で繋がれた二人が心を解放していく様は崇高ですらある。また自己の内側への他者の侵入を許すことで痛みをやりすごしていたレイに、ラザルスが鎖で心から、食べ物で口から、歌で耳から、衣服で体からその守るべき身体を明確化してやる過程が鮮やかだ。更に過去の出来事を清算すべく築き上げていく擬似親子の物語としての視座をもってしても、「ミリオンダラー・ベイビー」に近しい美しさを表現している。
クリスティーナ・リッチは「耳に残るは君の歌声」「モンスター」と着実に演技の幅を広げ、今作では前述のとおり、果敢なげだが時として獣の如き顔も持つ美少女レイを完璧に演じている。また驚くほどブルースを達者に演奏し、圧倒的な存在感を見せるラザルス役のサミュエル・L・ジャクソンも素晴らしい。更に後半で重要な役どころとなるレイの恋人を演じるジャスティン・ティンバーレイクも特筆に値する。

目に見える持病であったり、心の中に潜む罪悪であったり、人にはそれぞれの“ブラック・スネーク・モーン”があると思う。しかもほとんどの人が初期のレイのように神経質に悩みながらも、どうすることもできずに人生を蝕まれているように思われる。その自分自身の弱さに気づいている人にとって、この映画は殊に意味のあるものであろう。僕も、まだ完治したわけではないが病と闘っていく強さを身に付けたレイと、ブルースを再び奏ではじめ、自信を回復したラザルスの姿には胸を打たれた。


現在、渋谷にて単館上映している(やっと公開中映画を紹介できた...)。この隠れた佳作をどうぞお見逃しなく!
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ブラック・スネーク・モーン

 孤独な元ブルースミュージシャンがセックス依存症の若い女性を“荒療治”で治す、衝撃作。  米南部の田舎町に住むラザルス(サミュエル・L・ジャクソン)は、自宅近くでけがをした女レイ(クリスティーナ・リッチ)を見つけ、連れ帰る。彼女が誰とでも寝るセックス依...

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晋撰堂

Author:晋撰堂
晋撰堂は京極夏彦の京極堂シリーズにかぶれていた頃に命名。
自分の名前にも由来していますが、文化的娯楽作品から気が向いたものを取り上げてレビューを書いていこうと思います。たまに雑記と称して日々の雑念も放出します。
ただ問題は、ほとんど更新をしないということ。休眠状態を常としている現状ですが、もっと気軽に書けるよう努力してみようかと思ったのも、本日の気の迷いかもしれないです……

コメント、リンク等も何卒御気軽に。

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